540名の子どもたちが一緒に学び、遊ぶことのできる学校です。敷地はサッカーコートおよそ2個分。この学校には、幼稚園、小学校、中学校が入ります。学校の大きな特徴は、16の小さな建物(教室7m×7m)が、点在するかたちで配置されるところにあります。「大きな学校」ではなく、「小さな村」の雰囲気を大切にしています。教室と教室のあいだには、子どもたちがかくれんぼをしたり、秘密基地をつくったりして遊ぶことができる小空間も生まれます。 建設には、大きく幼稚園建設、小学校建設、中学校建設の3つの段階があります。各段階において、建物は円形状に配置され、最終的にはそれぞれの中庭がつながることで大きな中庭が形成されます。はじめに、135名の子どもたちが通うことがのきる幼稚園と職員室、トイレを建設します。そして、270名の子どもたちが通うことのできる小学校と、教師やボランティアのための宿泊所を建設します。そして、135名の子どもたちが通うことのできる中学校を建設し、学校の南側に運動場を建設すれば完成です。
私たちは、学校をできる限り低コストかつシンプルに建設することを心がけています。と同時に、学校の建設によって子どもたちや地域社会に貢献することも目指しています。例えば、学校を小さな単位(教室)に分けているのは、建設とその資金調達を段階的なものにすると同時に、子どもたちのための小空間を生み出していくための工夫です。さらにこの方法は、傾斜地に建つ建物の基礎工事を容易にし、また計16もの建物を同じ工法で建設することで、建設ノウハウの現地への定着と改善を促していくことができると考えています。
デザインプロセス
学校と運動場の配置
学校は傾斜地に建設されます。そのため、最も勾配が緩やかな沿道沿いの敷地北側を校舎建設予定地として選びました。こうすることで、基礎工事を行いやすくし、建設費を抑えることができます。運動場は、南側の斜面(勾配17%)を掘り込み、階段状に盛り土をすることで整備します。こうすることで、各水平面の高低差は約1.5mで済みます。また、基礎工事の費用を抑えるために、アースバック工法を提案しています。これは、基礎工事の際に掘り出した土を土のう袋に詰めて、積み上げていく工法です。掘削作業を含めると、工期は長くなりますが、土のう袋は構造壁としてすぐに使用することができます。
学校を小さな単位に分ける
すべての建物は基本的に同じ大きさで、同じ部材と工法を用います。大事なことは、比較的自由な配置計画となっているため、100%正確な場所に建物を建てる必要がないということです。この考え方であれば、しっかりとした敷地の調査図面がなく、大まかな勾配値しかない状況で、建設が進むにつれて出てくるであろうあらゆる地面の起伏に対応することができます。また、工事にはミスがつきものですが、最終的にその数は減ると考えています。なぜなら、すべての建物は同じ工法を用いており、効率的な方法を習得していけば、その後の建物は短期、低コスト、そしてより上手に建てることができるはずだからです。つまり、この方法には次の利点があります。まず、土地の傾斜に対して学校を小さな単位に分けて配置することで、少ない掘削作業と単純な基礎工事での建設を可能にします。さらに、地面の起伏に対して柔軟な配置計画のため、最小限の掘削と整地で建物を建設する場所を決めることができます。
塀ブロックの節約
通常、塀の建設は、防犯上の理由から必要とされることが多く、学校建設という本来の目的とは無関係であるにもかかわらず、多くの時間と資源を必要とします。これらを最小限に抑えるために、校舎の壁を塀の一部として利用することで、必要なブロックの数を減らすことにしました。そのため、塀は建物の間を縫うようにして建てられ、塀の役目をする壁には窓を高い位置に設けます。こうすることで、校舎を囲むかたちで建てた場合、260mになる塀の全長は95mで済みます。
建設のフェーズ化
学校を小さな単位に分けることで、そのとき利用可能な資金、あるいはニーズに応じて段階的に建設できるようになります。そこで全体を3つの段階に分けることにしました。はじめに、6つ、次に6つ、最後に4つの教室を建設します。重要なことは、途中で建設する教室の数を変更したり、あるいは将来のために建設地を残しておくことができるということです。そしてなにより、建設途中であっても学校としての運営が可能になるということです。子どもたちは学校の建設完了を待つ必要はありません。