ドイツのNPO・WeBuilding e.V.は、ガーナのNGO・Volunteer Partnerships for West Africa(VPWA)と共同で、ガーナに学校を建設します。VPWAは建設予定地の所有者であり、WeBuilding e.V.は、設計や監理など、建設を技術面、経済面から支援しています。 学校は、ガーナのヌサワン市近くにあるダマング村に建設されます。村は、首都アクラから50キロほどのところに位置していますが、アクセスは不便で、悪路のなかを相乗りタクシー、小型トラック、徒歩で行かなければなりません。村人の多くは農家で、保護者の大半は学校に通ったことがなく、識字率も低い水準にとどまっています。また、生活は貧しく、村人の多くは村から出たことさえありません。 ダマング村は、周辺の村々から徒歩圏内にあり、この地区の中心に位置する村です。村にはいくつかのお店と市場、そして公立学校がひとつだけあります。しかし、この学校は、児童の定員超過や教師の質の低さといった問題を抱えています。それに対する財政的支援は不足し、子どもたちが受ける教育と身につく社会的スキルのレベルは、期待を下回る状況です。 VPWAの代表であるヘイフォード・ジアウは、次のように述べています。 「村には公立学校がひとつありますが、それだけではすべての子どもたちを受け入れることはできません。なぜなら、周辺の村々から子どもたちはこのたったひとつの学校に通ってくるからです。現在、ひとつの教室に70人の子どもたちが授業を受けていることがあります。これでは質の高い教育とはいえません。新しくできる学校は、既存の学校と競合するのではなく、むしろ協力しあうことができます。私たちは、地域のほかの学校と協力し、人材や学習環境を共有することで、村とその周辺地区の教育水準を改善していくつもりです。私たちのような民間団体が教師の質の管理について直接影響力を持つことは難しいですが、公立学校にはそれができます。」
ガーナの教育について
ガーナ共和国は、西アフリカの海岸部に位置し、日本の約3分の2の国土に約2,700万人が暮らしています。2007年以降、ガーナの教育制度は幼稚園を含めた2・6・3・4制となり、4歳からの幼稚園2年間、小学校6年間、中学校3年間が義務教育期間となっています(公立学校は無償)。幼児教育の重要性は多くの研究で取り上げられ、幼児にとって0~5歳までの期間は、言語、学習、考察、社会交流といったその後の基本的な能力の基礎を発達させることが知られていますが、ガーナの農村地域では、多くの保護者が金銭的な理由もあって子どもを幼稚園に通わせることができず、それが地域社会に貧困の世代間連鎖をもたらしています。政府としても幼児教育制度を推進していく考えですが、多くの課題を抱えています。なかでも整備が遅れた学習環境と教員資格をもった教師の不足は、速やかな対処が求められています。また、幼児教育は、すぐには成果が見えにくいことや、保護者や教師、政府関係者といった教育に直接関係する大人たち自身が、幼少期からの教育を受けてこなかったため、幼児教育の重要性を意識していないといった問題もあります。 ユニセフによれば、ガーナの若者の識字率は約86%と推測され、ここ10年で大幅に伸びていますが、いまだに40万人以上の子どもたちが学校に通うことができていません。 ガーナの15歳以上人口における識字率は63.6%で、英語とガーナの言語の両方で読み書きができる割合は46.4%となっています。識字率については、女性が54%、男性が74%と、男性のほうが高くなっています。また、東部州の6歳以上の人口(約174万人)のうち、30.6%が学校に通ったことがなく、小学校に通ったことがあるのは26%、中学、高校に通ったことがあるのは30%であり、その後の大学や職業訓練校に通ったことがあるのはわずか2%となっています。また、女性の37%が全く学校に通ったことがないなど、この点でも男女間に差が見えます。 東部州にあるすべての学校の在籍生徒数のうち、62%は小学生、23%は中学生、そして7%が高校生です。つまり、現状のまま推移すると、小学校を卒業したすべての子どもたちが中学校に通うには、それに対応するために1日3回のシフトを組まなければならないということになります。このことは、中学校進学時に激しい競争が起こることを示しているだけでなく、かなりの割合の生徒が小学校と中学校以降の教育を受けることができなくなることを示しています。学習環境と教師の数の不足がもたらすこうした激しい競争は、現在、地区のあらゆるところで起こっています。